小商いとコミュニティ

102号室:はと⼯房。

 フリーランスをしながら、やりたかった雑貨屋の開業

左⼿前:はと。さん

 

フェルトでつくったカラフルなバッジやヘアゴムなどの販売を⾏なっている雑貨屋「はと⼯房。」のはと。さん。幼稚園の頃から⼿芸を始め、服の勉強のために北海道から上京。フリーランスでラジオ番組制作の仕事をしながら、「はと工房。」を営んでいる。夢中になっていると夜通し作成しているときもあるそうです。

 

 

̶̶ 商いをしながら、住むというコンセプトの欅の⾳テラスを選んだ理由をお聞かせください。

 

はと。:ずっとお店を開きたいと思っていて、不動産サイトではじめて「⾼円寺アパートメント」(注1)を⾒つけた際、「店舗併⽤住宅って考えもあるんだな」って知りました。住宅とは別に店舗を構えることも考えていたのですが、⾯倒臭がりなのできっと店舗に⾏かなくなるんですよ(笑)。それで店舗併⽤住宅を探していたら欅の⾳テラスを⾒つけました。⾼円寺に10年ほど住んでいて、中央線が⼤好なので⾼円寺から離れることに抵抗があったんですが、ずっと雑貨屋をやりたいと思っていたので思い切ってここに越してきました。

 

 

̶̶ 他に仕事はされていますか?

 

はと。:もう1つラジオの番組制作をやっています。フリーランスで多少働き方に⾃由が利くので、ラジオの仕事がないときは基本的に店を開けています。以前は時間があるだけ仕事をしてましたが、お店を開ける時間を増やしたくて仕事の効率化を考えたり、自宅でできる仕事は自宅でするようになり働き方が変わりました。

 

マルシェの時のはと⼯房。の様⼦

 

̶̶ ⼊居前に想像していた暮らしとのギャップや、逆に⼊居されてよかったなと思ったことはありますか?

 

はと。: 1⼈暮らしをして、⼤家さんやご近所の⽅と関わりを持つようになったのは初めてでした。今までは隣に住んでいる人の顔がわからないくらいだったのが、欅の⾳テラスでは⼊居者同⼠でパーティーを開いたり出かけたり、こんなにご近所づきあいが楽しいとは思いませんでした。商いは儲かっていないですが、お店を開けているとテラスを気に⼊った地域の⼦ども達が遊びに来てくれて、そうすると親御さんとも世間話をするようになるんです。ここに住んでから周辺地域がよそって感じではなく、⾃分がコミュニティの中にいるような気がしています。そうなると、街中を気を抜いて歩けないなって(笑)。ここに来て暮らし⽅が完全に変わりました。仕事以外でこんなに⼈と関わりを持つなんて、不思議な感じです。友達にここでの暮らしを話したら羨ましがられましたし、友達から「知らない⼈とそんなに関わるタイプだったっけ?」と⾔われたときは、「⼈って変わるんだな」と実感しました。

 

 (注1) 「⾼円寺アパートメント」:元々はJR東日本の社宅だったものを株式会社ジェイアール東日本開発がリノベーションした賃貸住宅。お店を開いたり、クリエイティブな活動にいそしんだり、多様な目的に応えやりたかったことが実現できる暮らしの場を提供するというコンセプトのもと作られています。

 

 

 

106号室:Ichie / いちえ

 故郷糸島のもののよさを、練馬で伝える

⻘⽊さん

 

Ichieさんの店主の⻘⽊さん。故郷である福岡県糸島産のものを中心に陶磁の器やアクセサリーといった、作家さんによって丁寧につくられた雑貨を取り扱っている。

 

 

̶̶ 欅の⾳テラスを選んだ理由をお聞かせください。

 

⻘⽊: もともと雑貨で販売や制作に携わってきて、⾃分でお店を開きたいと思っていました。住みながらお店ができる場所に興味があり、実家がある福岡か都内の2択でずっと探していたんですが、福岡は住み開きをするような建物が少なく、あったとしても、古くて建物全体を修理しないといけなかったんです。家賃もあまり都内と変わらないですし、初期費⽤や内装⼯事も考えると⾼くなるので、都内ではじめに⾒つけたここに決めました。

 

 

̶̶ 実際に見てすぐに気に⼊ったんですか?

 

⻘⽊:雰囲気は気に入りましたが、居住と店舗のスペースの間に壁や収納がなく、⾃分でつくらないといけないので、はじめは不安がありました。

 

⽷島産の塩や作家による器が並ぶ

 

̶̶ ⼊居前に想像していた暮らしとのギャップや、逆に⼊居されてよかったなと思ったことはありますか?

 

⻘⽊:お店の相談のみならず、プライベートのことも相談できるような関係性を持てることに魅⼒を感じています。⼀⽅で課題も⾒えてきています。新しい住まい⽅として、欅の⾳テラスは注⽬もされ、⼊居者もすぐに集まり、企画や建物の⾯では⼤成功だと思います。しかし⼊居者の⽴場としては、まだ成功とは⾔えないと感じます。お店を開かなければ、お客さんはやってこないですが、住宅地なのでお客さんが少なく、開けたら経済が回らないといった⽭盾が⽣じるんです。今後どうやって、欅の⾳テラス内で経済を回していくのか、そこのバランスをどうしていくのか。運営管理の⾯でも、今はつばめ舎さんにイベント企画を対応していただいていますが、ご⾃⾝たちの仕事もある中で、ここにつきっきりと⾔うわけにはいきません。いずれ⾃分たちだけでイベントを⾏なったときに、誰が主導して引っ張っていくのか。今は善意で動く⼈たちに負担がかかってしまいます。そこのマネジメントをしっかりしたほうが、⼊居者としても動きやすいなと感じています。今後欅の⾳テラスのような場所が増えるのであれば、この問題は今後、ますます重要になるのではないでしょうか?その解決法によって、こういった店舗併⽤住宅が増えていくのか、あるいは終わってしまうのかが分かれるのだと思います。

 

 

 

2階:tsugubooks

 土日限定、のんびり滞在歓迎型本屋

お店の様子。本棚はDIYをしたり、設計士さんに作ってもらったり

 

平⽇は会社員をしながら、週末は2階で、ちいさな本屋を開いているtsugubooksさん。自ら選書した新書や古書を販売するほか、カフェや美容院の本棚を間借りし、本を販売する「間借り本屋」の活動も⾏なっている。 

 

 

̶̶ 欅の⾳テラスを選んだ理由をお聞かせください。

 

tsugubooks:以前、仕事で⻑崎に6年ほど住んでいたことがあり、そのときに町やコミュニティについて考えるようになりました。⾃分から輪の中に⼊ることが苦⼿なので、こちらが家を開いたら、誰かしら⼊ってきてくれるかもしれない、住み開きをしたいと思ったことが欅の⾳テラスを選んだきっかけです。

 

 

̶̶ ⻑崎に住んでいて、街に対して住み開きをしようという考えに至った背景は何でしょうか?

 

tsugubooks:2つありまして、1つは、仕事上、電話でさまざまなお客さんと話すのですが、その際に病気になったことや深い⾝のうえの話を聞くことがあったことです。そこで誰かの話を聞くことは、知らない⼈の⽅ができるのかなと思いました。その⼈は2度と私と喋る機会もなければ、会うこともないので、なんでも話すことができるのかなと思いました。「話を聞くことは誰の仕事なんだろう?」と疑問に思ったとき、私のように⼈の話を聞きたい⼈がいて、毎⽇のことを吐き出したい⼈がいるのであれば、そういった⼈たちの接点の場があってもいいのではないかと思ったんです。もう1つは、地域の場についてです。⻑崎はとてもいい街で、⻘年会の⽅をはじめ、街を盛り上げようと努めている人たちがいます。ですが、ある時期から賑わっていた繁華街に空き店舗が目立つようになりました。街が寂れていくというか、観光客向けに街中にお店やスペースをつくったものの、一過性の盛り上がりが終わってしまった。消費されてしまった印象を受けました。チェーン店ができたときは地元の⼈は⼤喜びしたんですが、当時の私は少し残念に感じてしまいました。⻑崎にはいい人がいて、いい店がある。お店をつくる側の人と、使う側の人がうまくつながればもっと良い場が育っていくはず。一緒に街をつくれるはず。自分も単なる消費者ではなく、何らかのかたちで地域と関わりたい、うまくつなげていくことはできるかもしれないと思いました。うまく繋がってないなという印象もあって、何かしらつながりが感じられる地域の場をつくりたかったんです。

 

 

̶̶ もともと清澄⽩河で間借り本屋をされていましたが、どうして欅の⾳テラスで住み開きをしたいと思ったのでしょうか。

 

tsugubooks:本が好きなので、本屋を通して住み開きができないかと考えていました。もともとは、清澄⽩河で私設図書館のようなものをやろうと思っていたんですが、知らない⼈から本を借りることは抵抗がありますし、知らない⼈の家まで⾏って、本を読む⼈はいないだろうと思ったんです。また、オートロックのマンションに住んでいることもあり、すぐに家を開くようになるのは難しかったです。そこで、本は売った⽅が読みやすいかもしれないし、本のよさを多くの⼈に届けたいという希望もあって間借り本屋を始めました。清澄⽩河以外にも吉祥寺や下北沢などで、⾃分がランチをしにいくお店に本を置いてもらっていました。転職をする際、引っ越しをしないといけなくなって、ここを⾒つけて、⾃分が希望していた店舗と個室を扉で仕切れる間取りになっていますし、DIYも建築家の⽅に相談できるのもよいと思い選びました。

 

 

̶̶ ⼊居前に想像していた暮らしとのギャップや、逆に⼊居されてよかったなと思ったことはありますか?

 

tsugubooks:⾃分の好みの間取りで決めたのでとても満⾜しています。住んでみて、みなさんとこんなに仲良くなることに驚きましたし、いろいろな⼈が⼀緒に住んでいて楽しいです。アパートのゴミ当番の話し合いのために居住者が集まって会議をしますが、そういった経験は、今までのように周りと接することなく1⼈で暮らしていたらできなかったと思いますし、意⾒の違う⼈と話すことはとてもいい経験だなと感じます。

 

 

 

205号室:atelier SAM

 アトリエを公開して、仕事を発信

Yahika.さん

 

atelier SAMの Yahika.さんはオーダーメイドの服飾作家として、オリジナルブランドのアクセサリーや洋服の製作をしている。部屋を解放し制作過程を間近で⾒ることができるオープンアトリエにしている。

 

 

̶̶ 欅の⾳テラスを選んだ理由をお聞かせください。

 

Yahika.:建物全体がお店や事業を行う方のみが住める環境で、これまで以上に多くの方に自分の活動を知ってもらう機会が増えることに期待して、活動の幅を広げるために思い切りました。

 

 

̶̶ 作業中もアトリエを ⼀般公開されているのでしょうか?

 

Yahika.:⼀般の⽅に⾒せられない案件を扱うときは閉めていますが、ご近所さんの依頼などは制作過程を⼀般公開しています。

 

外の⼩窓から⾒えるミシン⽷やスケッチ

 

̶̶ ⼊居前に想像していた暮らしとのギャップや、逆に⼊居されてよかったなと思ったことはありますか?

 

Yahika.:今までの閉じたアトリエでは⾃分から発信しないと何も起きなかったのが、ここではご近所さんやイベントに来られる⽅など⼈の⽬に触れる機会が多くなったので、ここで作業をしているだけでも仕事の発信になっているような気がします。また東京はあまりご近所の⼈と挨拶を交わすイメージがなかったのですが、テラスに遊びに来てくださるお客様やご近所の方と自然と交流があり、もちろん住民同士でも交流があるので、芸能⼈でもないのに、おかしな格好では外に出られなくなりました(笑)。いい意味で緊張感がありますし、それこそ挨拶がアトリエを知ってもらえる機会になっています。ここに住むようになって、昔ながらの付き合いってすごくいいなと感じますし貴重な経験をさせていただいてます。

 

 

 

[2019.08.10,欅の音terraceにて]

インタビュアー:下吹越武人・飯田彩・川田優太郎・イン チユ・桜本知佳

文責:川田優太郎