利便性よりもつながりを求めて

清水さんが始めたコワーキングスペース

 

清水──実はそういうものにも少し興味があって、同じ葉山内ですが少し離れたところにコワーキングスペースをやり始めました。でもそっちは僕が常にはいなくて、週に1回くらい顔を出しに行っています。まだメンバーも5人くらいなので、行っても居るのは1人、2人ですね。

 

下吹越──場所はどこですか?

 

清水──もう少し海の方です。墓が周りにいっぱいあります。

 

山本──本当に墓地ですよね(笑)。

 

下吹越──これも古民家を改修されたんですか?

 

清水──いえ、これは普通の民家を改修しました。友人の家です。家族でアメリカに行って、3年は帰ってこないので、何かしてみようと始めました。

 

山本──この家はもともと中古で買った家を清水さんが改修して、そこにご家族の方が住まれたんですよね。すごく綺麗に作ったのに、その家族はアメリカに行っちゃいました(笑)。

 

清水──葉山にコワーキングスペースっていうのがどのくらいマッチするのかはわからないですが。これも1つの勉強というか社会実験ですね。

 

山本──管理人は居ないのですか?いなくて怖くないですか?

 

清水──持ち主自身はセキュリティーなんて全然気にしない人で、鍵なんて閉めなくていいよって。

 

山本──金目のものは基本的に置いていないですか?

 

清水──ないですね。入り口にメンバーだけが開けられるスマートキーが付けてあります。だから無人管理みたいな感じですね。中にはコピー機が置いてあります。空缶を置いてお金を入れるシステムで、白黒コピーをしたら10円入れるといったルールです。

 

下吹越──ゴミとか清掃などはどうされていますか?


清水──
それは僕が行ってやるときもあります。あとは気の利いた人や、優しい人がいてやって下さる時もあります。

 

葉山芸術祭の際、土間がイベントスペースに。

近藤──頂いた冊子の写真を見ていると今インタビューをしているこの土間をイベントスペースのように使っていますが、これはどういうイベントで使われているのでしょうか?

 

山本──この写真は、葉山芸術祭というイベントです。ゴールデンウィークの頃に約1カ月開かれます。会期のうち土日だけ、2週くらいこの場所を開放しています。そのためのチラシも作ってお客さんを呼んで、イベントをします。飲食店の方に頼んで、タイ料理を作って頂いたこともあります。そうしたらタイ料理目当てで沢山の人が来ました。

 

山本──あとお餅つきをお正月と4月にやっています。

 

清水──お正月用のお餅をついて皆さんに持って帰っていただきました。

 

山本──数えたことはないけど100人か200人か沢山来てくださるよね。そういう人達にいっぱい作って、食べてもらって。お手伝いしていただいた方にのしを付けて配ったりもします。

 

葛西孝憲(以下.葛西)──そう言ったイベントの宣伝も口コミで広がって行くのですか?

 

清水──そうですね。チラシも毎回作って配りますけど。最近は怠けています(笑)。

 

山本──そう、ポストカードくらいのチラシを作って毎回配ります。あとはFacebookで拡散したりします。情報発信を怠ると目に見えて反響が変わるのがわかりますよね。

 

下吹越──そうか。ということは葉山の皆さんは、地元の情報収集はポストカードなどのチラシで見つけるのですね。

 

山本──そうですね。あとは回覧板とか。

 

近藤──この土間はそう言ったイベントの時に、地域の人にも使ってもらう感じですか?

 

山本──私たちが主導して地域の人たちに使ってもらうっていう感じですね。

 

下吹越──今後の清水さんの活動の展開はどのように考えているのでしょうか?将来的な展望みたいなものがあれば教えてください。

穏やかに話す清水さん

 

下吹越──この辺りも温泉は出ますか?

 

清水──そうですね。新聞か何かで見たんですけど、香川県高松市に仏生山温泉というのがあって、そこはお父さんが掘り当てた温泉があり、そこに建築家の息子が事務所を作り、旅館を設計し、建てたそうです。息子の設計事務所から宿泊もできる旅館へと広げていくと少しずつ街のコミュニティを再構築することに繋がったという話を聞いて。秋くらいに見に行きたいと考えています。何だか風呂ってスゴイ良いなって思っていて(笑)。

 

山本──どうでしょう。でないですかね?

 

清水──葉山温泉というのがあります。今はスタンドです。ポリタンクで買える仕組みです。

 

下吹越──清水さんが考えているのは温泉ではなくて、お風呂ですか。

 

清水──なんとなく、お風呂っていうのが良いなぁって。

 

山本──葉山の人ってみんなお風呂に飢えているんです。ここはリゾート地みたいな場所なのに温泉だけ出なくて、銭湯へ行くにも横浜か横須賀まで出なきゃいけない。

 

清水──風呂があれば解決することが多そうですけどね。葉山は実は観光場所があまり無いんですね。そのため、飲食店は冬場がしんどいようです。

 

山本──週末しか営業できません。

 

清水──宿泊施設もあまりなくて。風呂があれば、そういうところにも変化が生まれそうな気がします。ランナーの人や自転車の人って、走った後にちょっと汗を流して、ビールを飲みたいけど、葉山にはそういう場所がないって言う人がいらっしゃいます。ちょっと荷物を預けて、シャワーを浴びられるような場所があれば良いです。

 

山本──実は、葉山にはすごく良いランニングコースがあるんです。

 

近藤──最後ですが、‘‘ワークスペース”と‘‘ワークプレイス”の違いについて、かざはやファクトリーの皆さんが、今どのように感じているのか、感想をお話しください。

 

清水──難しいですね。僕にとってのワークプレイスは、雑音なのかなって思います。僕自身、例えば、図書館で勉強や仕事をするより、ファミレスや、カフェの方が仕事しやすいです。自分もかざはやファクトリーでも誰かが別の仕事をしている状況の方が仕事がしやすいように思います。

 

山本──そうですね。私は元々家で仕事をしていました。主婦だから、家だと家事など色々な事が気になって、こっちに脱出してきました。このかざはやファクトリーはワークスペースと思っていましたが、今日お話を聞いたら、ワークプレイスなんだなと思いました。ここにくると暖かい雰囲気で、家の雑事を忘れて、集中して仕事をできるし、困った時もすぐ誰かに聞けるというメリットもあります。また誰かとお話して仕事に関係ない悩みも解決できたりとか。仕事がどんどん横に広がっていくのも繋がりのあることですよね。

 

下吹越──二人とも共通していると思うのですが、職住近接というのもすごく重要なポイントだと思われますが、いかがですか?

 

山本──そうですね。そうだと思います。

 

下吹越──ワークプレイスが、家族やプライベートの問題も含めて、地面で繋がっているような感じというか。

 

山本──そうですね。

 

下吹越── あと、ここは古民家なのがいいですよね。

 

山本──空気感がいいかもしれないですね。

 

清水──やっぱり人が住んでいた建物は気配があっていいですよね。

 

下吹越──あと住宅地の中というのもいいですね。

 

山本──ここが改築したばかりの時に、近所のご老人がここに入ってきて、「ここのおばあちゃんが生きていた時よく遊んでいたのよ。ここがこんな風に変わったのねぇ。」とすごく喜んで下さったんです。そういう暖かなつながりを感じられるのはいいですね。

 

下吹越──なるほど。この場所生活が昔からずっと繋がっている生活の先端にいるような感じでしょうか。たぶん今後次の方に繋がり続けるのだろうなぁという感覚がすごく素敵ですよね。

 

最後に長谷川さんも、このインタビューに参加してくださいました。

 

長谷川──私は東京に生まれて育って、ずっと都内で暮らしていました。はじめは仕事なのかプライベートなのかもうよくわからない感じで生活していました。お金を稼ぐために仕事をしている感じがないから、仕事相手が友達になったり、友達が仕事相手だったり。でも都内での職場は友達の席に行かないと話す機会がないですし、偶然街で声をかけられることなどほとんどないですよね。そういったことが積み重なり、都内での生活がどんどん辛くなっていきました。1人で寂しいという気持ちもありましたし、親が亡くなったことをきっかけに葉山に移住しました。最初、葉山に来た時は、家で1人で仕事をしていました。メールで仕事はできましたが、次第にうつ病になりそうな気がしました。なので、かざはやファクトリーに入ってすごいホッとしたというか、胸の中で孤独死しなくてすむって思いました。ここではそんなにお喋りをするわけではないですけれど、やっぱり挨拶ができる人がいることはいいです。

 

下吹越──お話をお聞きしていて、ワークプレイスとは社会的空間なんじゃないかと思いました。人間は何かしら社会に帰属していないと、なんとなく不安になったり、自分の存在意義を見失ったりしてしまいます。たぶんメールで対話したり仕事上のやり取りをしても社会へ接続している意識は希薄で、実体的な社会空間に身を置くことがすごく重要なんじゃないかと思いました。かざはやファクトリーはこの古民家空間も素敵ですが、この場所が葉山全体のネットワークにつながっているという実感が心地良さを作っているのかもしれません。今日は大変興味深いお話をありがとうございました。

 

 

[2018.07.26,かざはやファクトリーにて]

インタビュアー:下吹越武人・近藤有希子・呉沛綺・葛西孝憲・畠山かおり・大塚翔太

文責:近藤有希子

 

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