「いい感じ」の仕事のスケールをつくる

[After Talk]

馬場正尊さんをゲストに迎え、インタビューの内容を振り返りながら、これからのワークプレイスとは何かを考えます。

 

下吹越 ──このインタビューだけ僕は同席できなかったのですが、設計事務所をやられている丸石さんっていくつぐらいの方ですか?

 

川田 ──40歳くらいです。

 

下吹越 ──和菓子をつくっている鶴飼さんも同じくらいですか?

 

畠山 ──同級生です。

 

下吹越 ──和菓子屋と組むと設計事務所が成功するというのは、何をもって成功と言っているのでしょうか。 成功という概念をどのように捉えているかが少しわからなかったのですが。

 

畠山 ──お話ぶりから、うまくいっているという印象でした。

 

馬場 ──成功の定義は人それぞれなので、なんとなくいい感じということですかね。満足している様子や、楽しい感じが伝わってきたということですよね。

 

川田 ──設計で食べていくのは大変だとおっしゃっていましたが、それでもやりがいがあるようで、和菓子屋にお客さんが来た時は、丸石さんがお店の対応をしていました。設計だけにとらわれて生活しているというよりも、和菓子屋を通して人との会話を楽しんでいて、それが仕事の充実感につながっているように感じました。丸石さんは谷中でひっそりと暮らしたいという希望があるようです。

 

畠山 ──丸石さんは、市ヶ谷の「家づくりの会」というNPO法人でも働いていて、そちらには週1回通っているそうです。

 

下吹越 ──その家づくりの会はどのような活動をしているところですか?

 

川田 ──住宅を計画している一般の方と、建築家のマッチングをサポートしている組織です。

 

馬場 ──スペシャリティはあるけれども、アウトプットとしての仕事は色々でもよいという感じがありますよね。ゆったりと職を捉えてもよいのではないか、という感じが伝わってきます。和菓子屋でなくてはいけないわけではなく、たとえばピザ屋でもよかったのかな。

 

畠山 ──そうですね。たまたま和菓子屋だったようです。

 

下吹越 ──そのような感覚を持っている人が最近は増えてきました。

 

馬場 ──職能の定義が変わってきたという感じがしますよね。何を持ってスペシャリティというか、その軸が変わってきていますよね。いつかAIがすべての仕事をやるようになって、スペシャリティを持った人が急速にいなくなるかもしれない時代です。それによって揺さぶられているのかもしれないですね。

 

下吹越 ──仕事と場所との関わり方も少し違いますね。

 

馬場 ──雰囲気なのでしょうか。最近の若い世代は、平気で移住とかしていて、理由を聞くと、何となくよかったからという答えが返ってきます。大きな決断があっさりできているなと思うし、そのような感覚が関係しているのかもしれないですね。

 

飯田 ──スモールビジネスのままでいたいというのも今時ですよね。グローバルにつながっていって、設計事務所を拡大して、和菓子もどんどん売れて、というイメージはないですよね。地域の常連さんとともに、自分の手でつくれる分だけで、ひっそりとやりたいという感じがします。

 

下吹越 ──仕事のクオリティは下げたくないというプライドは伝わってきます。そのクオリティはアウトプットだけではなくて、自分の生活リズムも含めての質だと思います。

 

馬場 ──仕事や仕事場のスケールが自分にフィットしているという感覚が、すごく大切ですね。

 

[2018.09.25,open Aにて]

インタビュアー:下吹越武人・飯田彩・吉田育未・熊谷浩紀・近藤有希子・万柳慧・

葛西孝憲・川田優太郎・畠山かおり・大江和希

文責:飯田彩