経済重視型ではない、新しい資本主義の模索

 

下吹越 ──最後にもうひとつお伺いしたいことがありまして、贈与と交換という対照的な行為についてです。おそらくコミュニティは贈与の行為が基本になっていると考えられます。活動する時に対価の見返りを前提としない行為です。一方で今日話題になっているお客さんのような会員は、交換の行為が基本になっていると思います。野菜と会費を対価の関係と捉えているのではないでしょうか。場所はいくらでも自由に使っていいからという考え方は、交換ではなく贈与の行為で、対価としての見返りを期待し、損得でものごとを判断しないという態度は、地域社会にもともとあったコミュニティの基本的なかたちだと思います。考えてみれば贈与という行為がベースとなった農業形態というのは、昔からの伝統的な農村社会の典型ですね。それをCSAという仕組みを用いて都市部で実践しているのがすごく魅力的ですが、都市部ならではのご苦労もされていると思います。

 

片柳 ──贈与の関係が成り立っていると実感したことがありました。先ほども紹介したのですが、農場内の空地や飛び地を利用し、ハーブや果樹チームといった人たちに自由に栽培をしていただいています。ある夏にあまりにも暑くて野菜ができず、出荷できる野菜が少なくて悩んでいたら、果樹園チームの方がイチジクを寄付してくれたり、ハーブ畑チームの方がレモングラスを寄付してくれたり、それをみんなで分けて品数を増やして盛り上げてくれました。

 

下吹越 ──お話を伺っていてそこがCSA の最も魅力的なところです。しかし、会費と等価の商品を受けとるという交換関係で参加する会員が多くなってしまうことが、今のご苦労の一番の原因かなと思います。一方でなないろ畑で活動されているボランティアの方に接していると、ボランティア活動自体が生活のクオリティと密接に関わっていて、彼らのプライドを支えているように見受けられました。働くということと場所ということを結びつけて考えると、本質的な部分はそこではないかなと思いました。村井さんはどうのように思われますか?

 

村井 ──なないろ畑は本当に居心地がいい場所です。特に居心地の良さを感じるのは何でも受け入れてくれるところ、温かさです。マイペースにいろいろなことを質問させてくれますし、ここは僕にとって、大学の研究室のようなものが複数並んでいる教育の場のように感じます。知りたいことに対して詳しい人がたくさんいて、そういう知識を吸収したい人が集まってくるような場所だと思います。

 

 

下吹越 ──コミュニティは基本的に閉じていく性質ですが、ここは不思議な開き方をしていて、周囲の住民たちは素通りしていくかもしれませんが、社会の立ち位置を見失いがちの人たちに対してすごく開かれているように感じられます。

 

片柳 ──自然は懐が広くて、誰であろうとみんなそれぞれに自然と向き合えることができます。会社だといろいろなミッションがあって、その仕事に向いていないと弾かれちゃいますが、自然はなんでも受け入れてくれます。

 

下吹越 ──人間は何らかの集団に帰属していますが、昔はそれが地縁や血縁のように自らが選択できない集団であり、そのしがらみによる不自由さが強かったのです。しかし今は自由に帰属先を選択できます。なないろ畑はいろいろな背景を持った人が自分の居場所を見いだせる懐の深さみたいなものがあり、すごいことだなと思います。

 

片柳 ──おっしゃるように古い地縁、血縁は既になくなっています。だからこそ、自分たちの新しい共通点、理念や、主義、主張みたいなものを持って集まり、小さなエコビレッジのような集合体をつくったら面白いものがたくさんできると思います。多種多様な職人がいっぱいいて、彼らの技術を残していけるような村、ここに来ればどんな技術でもある、そういうものをつくっていきたいですね。職人の技術というものは何十年もかけて、代々伝わってきたものですから絶えてしまうことが本当にもったいないです。自分は江戸下町の欄間職人の技術を絶やしてしまったというトラウマがあります。祖父に断られても無理矢理跡を継げばよかった。自分がその絶えさせてしまった張本人のような罪悪感があるので、今ある農業技術は残していきたいです。

 

 

[2018.09.15,なないろ畑にて]

インタビュアー:下吹越武人・川田優太郎・畠山かおり・大塚翔太

文責:川田優太郎

 

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